【感想】プレゼント・ラフター

笑いの奥に、芝居を愛しすぎた人の孤独が、静かに残っていく舞台でした。

目次

公演情報

タイトル:『プレゼント・ラフター』
上演時間:約2時間30分(休憩込み)
脚本:ノエル・カワード
脚本:徐賀世子
演出:小山ゆうな
出演:
稲垣吾郎(ギャリー・エッセンディーン役)/ 倉科カナ(リズ・エッセンディーン役)
黒谷友香(ジョアンナ・リビアット役)・桑原裕子(モニカ・リード役)
望月歩(ローランド・モール役)・金子岳憲(ヘンリー・リビアット役)
中谷優心(フレッド役)・白河れい(ダフネ・スティントン役)
浜田信也(モリス・ディクソン役)/ 広岡由里子(ミス・エリクトン/レディーソフトバーン役)
公演期間:
・東京:2026年2月7日(土)~ 2月28日(土) PARCO劇場
・京都:2026年3月4日(水)~ 3月8日(日) 京都劇場
・広島:2026年3月14日(土)・15日(日)   JMSアステールプラザ 大ホール
・福岡:2026年3月20日(金)~ 3月22日(日) 福岡市民ホール 中ホール
・宮城:2026年3月28日(土)・29日(日) 電力ホール

観劇日:
2026年2月7日(土)17:00公演

あらすじ

舞台は高級アパートメントの一室。実力とカリスマ性を兼ね備え、誰からも好かれるスター俳優ギャリー・エッセンディーン。
だが彼は人気俳優ならではの孤独感と老いへの恐れを抱え、私生活でも演技をしてしまう。
まもなく海外ツアーへ出発する彼の元を次から次へと個性的な面々が訪ねて来て、騒動を巻き起こし・・・。

笑いのテンポの中で見えてくる人物の輪郭

本作はコメディでありながら、ただ軽やかに笑わせるだけでは終わりません。舞台上では絶えず会話が行き交い、絶妙な間で笑いが生まれ続けます。観客席も自然とそのリズムに乗り、最初から最後まで笑いの空気が途切れることはありませんでした。

けれど、その軽やかさの中で、主人公ギャリーの人物像が少しずつ浮かび上がってきます。
情事は「人生のスパイス」という捉え方をしているため、自分に向けられた好意を持ってきた人を拒まず、朝には忘れてしまうような、どこか危うさを抱えた人物です。けれど彼自身に強い執着や情熱がないため、その関係が生々しくなりません。ただし、相手からは愛されすぎるのでトラブルの原因になります。ギャリーの周りが慣れているのかそれとも彼と同様に「人生を楽しもう」というタイプなので、結果として、空気は重くなりすぎず、ロマンスコメディとしての軽やかさが保たれていました。

誰かを振り回しているように見えて、実は彼自身がいちばん状況に振り回されている。その構図が、舞台が進むほどに可笑しくなっていきます。

不器用な関係の中に残る、わずかな救い

妻リズとの関係には、不器用ながらも確かな情が感じられました。
言葉にはならないけれど、彼の孤独を理解しているのは彼女なのだろうと思える瞬間があり、その距離感がとても愛おしく印象に残ります。

これまでギャリーを中心に回っていた人間関係も、どこか均衡を保ったまま続いてきたように見えます。けれど、彼自身の変化に周囲が気づかないまま関係が続いていく様子には、少し寂しさも滲んでいました。理由は単純ではないのかもしれませんが、関係が続くことそのものが、かえって距離を浮かび上がらせているようにも感じられます。

それでも最後には、彼の抱えていた孤独がほんの少しだけ和らいだようにも見えました。救いだったのかどうかははっきりしませんが、そう思いたくなる余韻が、静かに残っています。

会話の「間」に浮かび上がる人物の輪郭

会話劇である本作は、演じる人の表情や視線、わずかな身体の動きによって空気が大きく変わっていきます。
同じ台詞でも、発せられる瞬間の間や沈黙によって意味が揺れ動き、その変化を客席で共有できるのは、生の舞台ならではの体験でした。

主人公ギャリーは、周囲を振り回しているように見えながら、実は状況に翻弄されている人物でもあります。混乱しながらも場の中心に立ち続けなければならない姿が、どこか可笑しく、コメディとしての軽やかさを生んでいたように感じました。

一方で、物語の底には、お金や仕事、役者として生きることの難しさといった現実的な側面も流れています。笑いの中にそうしたシビアさが混じることで、無意識のうちにひとりの役者の多面的な姿を見ているような感覚もありました。

こうした人物像が立ち上がる背景には、演じる側の存在も大きいように感じました。
1939年に書かれたイギリスの喜劇ということですが、少し短気でいい加減、それでもどこか優しくチャーミングなギャリーという人物像は、稲垣吾郎さんの持つ空気とよく重なって見えました
舞台の上で無理に作り込むのではなく、自然な佇まいのまま役が立ち上がっていくような感覚があり、長く温められてきた配役であることにも納得がいきます。
舞台上で見せる稲垣吾郎さんのさまざまな表情や動き、パジャマ姿やスーツ姿といった細部まで含めて楽しめる作品で、声の響きや所作の美しさも強く印象に残りました。
ふとした瞬間に見える身体の線の細さに驚かされるような距離感もあり、生の舞台だからこそ感じられる存在のリアリティが、この作品の魅力のひとつになっていたように思います。

こんな人におすすめ

・会話劇のテンポや「間」を楽しみたい人
・笑える作品の中に、少しだけ切なさを感じたい人
・舞台ならではの存在感や空気の変化を味わいたい人
・ラブコメディの軽やかさと人間味の両方を楽しみたい人

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