魔法の物語でありながら、これは不器用な父と息子の距離を描いた、とても人間的な舞台でした。
公演情報
タイトル:『ハリー・ポッターと呪いの子』
上演時間:約3時間40分(休憩込み)
オリジナルストーリー:J.K.ローリング
脚本:ジャック・ソーン
演出:ジョン・ティファニー
出演:
稲垣吾郎(ハリー・ポッター役)
酒井美紀(ハーマイオニー・グレンジャー役)
上山竜治(ロン・ウィーズリー役)
渡辺邦斗(ドラコ・マルフォイ役)
安藤聖(ジニー・ポッター役)
公演期間:
2022年7月8日(金)~12月27日(日)
TBS赤坂ACTシアター
観劇日:
2025年10月11日(土)12:15公演
父と息子、その距離の物語
『ハリー・ポッターと呪いの子』は、壮大な魔法の世界を舞台にしながらも、物語の核にあるのは父と息子のすれ違いです。
父は息子を守ろうとしているのに、うまく言葉にできない。
息子もまた、父とどう向き合えばいいのか分からず、距離が広がっていく。
そのもどかしさが、舞台を通して静かに、しかし確かに伝わってきます。
稲垣吾郎さんのハリー
稲垣吾郎さんの声は舞台によく映え、ハリーという人物の「不器用さ」をとても自然に立ち上がらせていました。
自信に満ちた英雄でありながら、息子のことになると途端に戸惑い、オドオドしてしまう。
どう寄り添えばいいのか分からない――そんな人間味のあるハリーが、強く印象に残ります。
ハリーが抱えてきた孤独
ハリー自身もまた、ダンブルドア先生の愛情を求め続けてきた存在だったのだと、改めて気づかされました。
自分の親を救えなかった悲しさ。
望まぬ姿に変わらなければならなかった痛み。
母の面影を前にしたときの、あの一瞬の喜びと切なさは、胸に残ります。
舞台ならではの魔法体験
魔法の演出は想像以上でした。
席が揺れるほどの仕掛けには思わず息を呑み、「これは舞台で観る意味がある」と強く感じます。
また、終盤の父と息子のやりとりは、後に稲垣吾郎さんがラジオで“アドリブ”だと語っていたと知り、驚きました。
それほどまでに自然で、温かな交流の場面だったからです。
変えられないものと、つながりの歴史は簡単には変えられない。
そして、人は一人では何もできない。
敵側の人物が抱えていた孤独も明かされ、その想いがハリー自身と重なったとき、物語はより深い余韻を残します。
ハリー・ポッターを知らなくても
正直に言えば、私はハリー・ポッターシリーズをほとんど知らないまま観劇しました。
それでも、この舞台は十分に心を掴んでくれました。
物語としての強度と、感情の普遍性があるからだと思います。
映画も改めて観てみたい、そう思わせてくれる一本でした。
こんな人におすすめ
・ハリー・ポッターを「物語」としてじっくり味わいたい人
・親子関係や世代間のすれ違いを描いた作品が好きな人
・魔法や派手さだけでなく、人間ドラマに惹かれる人
・舞台ならではの演出・体験を重視したい人
・シリーズ未履修でも、感情の物語を楽しみたい人
